研究プロジェクト


現在、進行中の研究プロジェクトは大きく次の4つにわかれています。


タンパク質のフォールディングと機能
タンパク質は、美しい形を持った特定の3次元構造に折りたたまれる能力を持ちます。アミノ酸配列を指定するだけで、どうしてこのような複雑なプロセスが生じるのか、この機構を理解することがタンパク質の機能、デザイン、そして進化の原理に迫ることでもあります。アミノ酸残基どうしの相互作用ネットワークを理解するために、エネルギーランドスケープ理論の考え方をもとに研究しています。また、折りたたまれるときのように構造が大きく柔らかく変化する過程は、タンパク質が機能を発揮するときにも重要な役割を果たします。エネルギーランドスケープ理論を用いて、酵素、分子モーターやシグナル伝達などの機構を解き明かします。具体的には、

  1. アロステリック構造転移を合理的に記述する新しい粗視化モデルを開発します。
     T. P. Terada, T. Kimura and M. Sasai, J. Phys. Chem. B, 117, 12864-12877 (2013).

  2. アミノ酸残基の立体配置をイジングスピンのような離散変数で表し、多体スピンモデルを用いてフォールディング転移やアロステリック転移を調べます。
     T. Inanami, T. P. Terada, and M. Sasai, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 111, 15969-15974 (2014).
     K. Itoh and M. Sasai, J. Chem. Phys., 134, 125102 (2011).
     K. Itoh and M. Sasai, J. Chem. Phys., 130, 145104 (2009).

  3.  反応によってエネルギーランドスケープが動的に変化する過程に着目する“動的ランドスケープ理論”を用いて、酵素反応、分子モーターの仕組みを解析します。
     Q.-M. Nie, A. Togashi, T. N. Sasaki, M. Takano, M. Sasai, and T. P. Terada, PLoS Comp. Biol., 10, e1003552 (2014).
     M. Takano, T. P. Terada, and M. Sasai, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 107, 7769-7774 (2010).
     K. Itoh and M. Sasai, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 107, 7775-7780 (2010).


ゲノム動力学
ゲノムは抽象的な記号配列ではなく、3次元空間に存在する物理的実体です。核の中でゲノムがどのような構造を持ち、どのように揺らいでいるかは、DNAをどのように読み取るかという、細胞の機能を決める重要な性質です。最近の実験技術の進歩は、ゲノムの構造と運動について多くの情報をもたらすようになりましたが、見通しのよい理解のためには、理論と計算による解析が不可欠です。ゲノムを高分子ひもとみなすモデルによって、ゲノムの運動をシミュレートします。

   K. Maeshima, S. Ide, K. Hibino, and M. Sasai, Curr. Opin. Genetics and Development. 37, 36-45 (2016).
   N. Tokuda, T. P. Terada, and M. Sasai, Biophys. J. 102, 296-304 (2012).


遺伝子ネットワークのダイナミクスと構造
遺伝子スイッチはお互いにpositive、あるいはnegativeな制御をするネットワークをつくっています。このネットワークの原理とダイナミクスを理解することは細胞をシステムとして理解するために重要な課題です。しかし、分子のつくるネットワークはゆらぎが大きく、確率的に振る舞うことが知られています。ネットワークのダイナミクスとゆらぎの関係を統計力学的理論、シミュレーションによって考え、その設計原理に迫ります。

  1. 遺伝子スイッチの確率過程を、経路積分を用いた平均場の方法で記述し、スイッチの動作を高次元空間の渦流として表示し、スイッチが揺らぐ様子と動作の機構をわかりやすく表現します。
     K. Zhang, M. Sasai, and J. Wang, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110, 14930-14935 (2013).
     M. Sasai and P. G. Wolynes, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100, 2374-2379 (2003).

  2. 真核生物の遺伝子は、転写因子の結合・解離とともに、クロマチンの構造変化、ヒストン修飾、DNAメチル化など、異なる時間スケールを持つエピジェネティックな過程が複合したシステムとして働き、ある場合には転写因子の濃度変化に敏感に応答するが、別の場合には環境の変化に応答せず安定に記憶を保つなど、多様な振る舞いを示します。システムのダイナミクスを解析して、エピジェネティックな制御の原理を調べます。
     S. S. Ashwin and M. Sasai, Scientific Reports 5 , 16746 (2015).
     M. Sasai, Y. Kawabata, K. Makishi, K. Itoh, and T. P. Terada, PLoS Comput. Biol. USA 9, e100338 (2013).


理論システム生物学
分子の時間空間パターンにも情報処理の新しい原理が隠されていると想像されます。細胞の中で情報伝達を担う分子の時空間パターンを計算機シミュレーションと統計力学の方法を用いて理論的に考えます。

  1. ES細胞の大きな揺らぎとiPS細胞へのリプログラミング。
     S. S. Ashwin and M. Sasai, Scientific Reports 5 , 16746 (2015).
     M. Sasai, Y. Kawabata, K. Makishi, K. Itoh, and T. P. Terada, PLoS Comput. Biol. USA 9, e100338 (2013).

  2. KaiABC蛋白質の相互作用によって生まれる生物リズムの理論。
     T. Nagai, T. P. Terada, and M. Sasai, Biophys. J. 98, 2469-2477 (2010).




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